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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.92 今、この時にしている努力は、今できる最大限の努力か?
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 mrt宮崎放送の『機銃掃射に怯えた日々~昭和20年宮崎の空の下で~』という番組を見ました。宮崎県で実際にあった米軍機による機銃掃射をガンカメラ(軍用機などに取り付けられ、偵察や攻撃などの記録に使われるカメラで機銃の引き金を引くと録画が開始される仕組みになっている)で撮影した映像を見て、番組の中で繰り返される銃撃戦は、特撮映画でもなんでもない、現実に宮崎県内で起こったことであり、この機銃掃射による犠牲者は一般人を含めて500人以上。その中には子どもたちも含まれていることに私は大きな衝撃を受けました(※機銃掃射を行うパイロットからは標的となる人々が見えていて、しかも、標的とされる人からも、そのパイロットの顔の表情さえも見えているということが、私にとって最大の衝撃でした)。そして、「東京大空襲」や「沖縄戦」などの記録番組は目にしたことが何度もありますが、この『機銃掃射に怯えた日々~昭和20年宮崎の空の下で~』という番組によって、東京や沖縄だけでなく、宮崎でもこのような戦争の惨劇が存在したことを初めて知りました。

 現在、宮崎県には、このときの機銃掃射によって被害を受けた人々が今も暮らし、その傷跡は、体ばかりでなく心にも大きく残っています。これらの人々が、「私の中でまだ戦争は終わっていない。もう、戦争はぜったいにいや。」そう静かにつぶやく声は、戦争を知らない若者たちが束になって大声で叫ぶ「戦争反対」の声よりも、はるかに心に響きます。実際に経験をするということは、それほど大きな意味をもつことなのです。

 最近、『わたしが子どものころ戦争があったー児童文学者が語る現代史』という本が出版されました。神沢利子、あまんきみこ、角野栄子、那須正幹、三木卓、森山京、三田村信行、岩瀬成子(敬称略)といった、私たちの誰もが一度は読んだことがある児童文学の名作を世に送り出した作家達が語っている子どもの頃の戦争体験の記録です。

 「命の尊さ」というテーマで児童文学の作品を書こうとする時、私がどんなに頑張っても、能力的なことはもちろんですが、戦争を経験したこれらの作家達の書くものには追いつくことは不可能であろう、私にそう思わせてしまう、経験とはそれほどすごいものなのです。
 さて、現在、私はある人物の生涯について調べています。これから取り掛かろうとする長編ファンタジーの参考にするためです。この人物は、ずいぶん昔の人なので資料が少なく、その人物像を知るために四苦八苦していますが、こういった作業もまた楽しくもあります。古の人々に書物を通じて出会えることは、想像力を書き立てるからです。実際に出会えたならきっと書物の中の出会いの比ではないでしょうが、出会えるという経験ができないからこそ、自由自在に想像を膨らませていくことができます。
 この人物の生涯を知れば知るほど、その波乱万丈の人生に想いを馳せざるを得ません。そして、その苦悩の人生を思うとき、私は思わず自分に問いかけるのです。「今、この時にしている努力は、今できる最大限の努力か?」と。

 この半年ほど、私はある目標を達成するために努力をしてきましたが、どうしても、達成することができませんでした。しかし、数ヶ月前から、この人物について資料を集めていく中で、私は、自分自身がやったと思える努力について振り返ってみました。そして、その努力が、決して、私ができうる最大限の努力ではなかったことを反省しました。それからの二ヶ月間、私は、私にできると思われる最大限の努力を続け、ついに、その目標を達成することができました。

 自分の生きる場所を選択することすらできなかったその人物の人生において、神様が与えたとしか思えないようなその才能を最大限発揮し、自分の生涯の生きる目的を果たした人。また、戦争という理不尽な理由で体の一部を奪われながらも、一歩一歩確実に自分の人生を歩んできた人々。それらの人々の存在は、多くを語らずとも多くを訴えます。苦しく辛い経験をするということ、そこから逃げずに人生を全うするということは、自分自身にとっても、そして、自分以外の人にとっても大きな影響を与えるほど価値があるのです。

 かつてスティーブ・ジョブズは、スタンフォード大学の卒業式においてスピーチを行いました。その中の「点を繋げること」という話の中で述べたように、「経験」という点をいくつも作り、いつか、その点同士が結びついて線となっていく日を信じて努力を続けることが大切だということです(コラムNo.46「点と点をつなぐということ」2011/12/1)。さまざまな経験が人間の視野を広げ、可能性を広げていくのです。ただ勘違いをしてはならないのは、経験の数が多ければいいというものではないということです。つまり、短い時間にいくつもの場所を転々とすることが、本当の意味での「経験する」ということではないということです。ひとつの場所で春夏秋冬を経験し、そこで起こった楽しいことや幸せな想いはもちろんのこと、苦しみや悲しみも経験してこそ、初めてその場所での経験をした、ということになると思います。

 このコラムの中で何度もテーマとして取り上げてきたように、「好きなことを見つけること。そして、それを続けること」(コラムNo.59 2013/1/4)、そのことがやはり大切であり、それこそが経験をいつの日にか大きく実らせることにつながると思うのです。そのためには、やはり、試行錯誤が許される子ども時代に、いろいろな経験をたくさんすることです。楽しい経験や、嬉しい経験。そして、さらには辛い経験や苦しい経験。そんな経験をしていく中で、「辛くても苦しくても、私はこれをやりたい」そう思える経験ができたら、それこそが本当に好きなことであり、これからもずっと続けたいと思える経験であり、いずれは才能につながっていく経験であると思うのです。

※今月の写真のテーマは、食欲の秋にちなんで、「美味しいものは美しい!」
2015-10-01 更新
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著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)

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