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みやざきの言葉 |
宮崎の自然・歴史に関するコラム集!様々な専門家がコラム・情報を掲載しています。 |
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 最近、方言が文字に書かれるのを見た人も多いと思います。方言は基本的にあらたまった場面に使用されたり、文字で表記される性質のことばではありません。しかし、最近ではコマーシャルに使われたり、方言ネーミング(方言が使用されている)商品が盛んに発売されています。また、張り紙や看板表記に用いられる例もあります。近年、言語景観(Linguistic Landscape:看板・標識・掲示物・貼り紙などの公共空間における文字言語の活動)という分野が盛んに研究されていますが、方言に関する言語景観研究も行われるようになりました。
方言が文字に書かれる場合、意識的なものと無意識的なものとに分けることができます。両者の性質は大きく違い、無意識的に文字に書かれている場合、それは地方共通語とか疑似標準語と呼ばれています。地域差はあるものの、その地域では共通語・標準語として使われているためにそのように呼ばれているのです。この無意識的に使われている例は、実は少なく、公共空間で使用されている方言のほとんどが、意図的に表記されたものなのです。方言形は地域特有のことばですから、地域性をアピールするには最適です。
無意識的使用
図1、図2は宮崎市新別府にある商店(~市場という名前でした)で撮影した映像です。宮崎市の伝統方言では、唐辛子をコショー、蒸しパンや饅頭をダンゴと表現します。若い人たちには、そんなことはないと反論する人も多いでしょうが、伝統方言の話と理解して下さい。コショーやダンゴは、語形は標準語形と同じですが、指示内容(意味する内容)が異なる方言です。図を見てわかる通り、漢字を使用することもできるため、地域性に気がつきにくいのです。アカコショーは胡椒と区別した名称で、図3のように田舎コショーと表現されることもあります。フクレダンゴはフクレガシ(ふくれ菓子)とも表現されます。
 図4は宮崎市新別府のイオンモール内にあるうどん屋「豊吉うどん」の映像です。右端のものは「天ぷらうどん」と表示されているが、うどんにのっているものは、標準語でいう天ぷらではなく魚のすり身を揚げたものです。うどんの映像の左端に小さく「魚のすり身」と書いてあります。地域差があることはわかっているが、あえて地域社会で使われている表現を使用しているのだと思われます。「天ぷらうどん」の左隣が「やさいうどん」「ごぼううどん」ですが、こちらは掻揚げの天ぷらうどんです。「いも、にんじん、玉ねぎのかきあげ」「ごぼうのかきあげ」と説明されています。さらに隣には「えびうどん」があり、これは海老の天ぷらが入ったうどんですが、これには何の説明書きもありません。一般にいう天ぷらを表現する場合、この地域ではエビテン(海老天ぷら)、ヤサイテン(野菜天ぷら)のように具材の名称をつけて表現することが多いのです。これらの方言による名称は、標準語形を知っている話者と知らない話者とでは感じ方が違います。標準語形を知っている話者にとっては、漢字を使っていても地域性を感じることになります。しかし、知らない話者にとっては、標準語そのものなのです。
 図5、図6のネリクリやアクマキのように地域文化特有の物については、標準語形で表記できないため、意識的・無意識的に関わらず方言形を使わざるをえません。ネリクリは餅とさつまいもを練り合わせたもので、ネッタクリ、ネッタボ、ネーボ、カライモモチ、カライモダンゴなどの表現があり、地域差が激しいもののひとつです。アクマキは竹の皮でもち米を包み、灰汁で炊いたもので、チマキとも表現されます。宮崎県南部域では一般的なチマキの映像を見せても、そのものがわからない話者も多いのです。 |
2008-06-11 更新 |
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