登り窯 かまたき見学
綾町といえば豊かな自然の中で、個性を活かして芸術的作品を作る方が多く住む町であります。
綾南川が近くを流れる「元町窯」さんで、珍しい登り窯を使った焼きの工程が見られるとのことで見学させてもらいました!
◆登り窯ってどんなもの?
元町窯の登り窯は、23年前に陶主の日高さんご夫婦が手作りで作った窯だそうです。
土やレンガ、粘土を使って作られたかまぼこ型の焼成室が坂を上るように3つ並んでいて、一番手前が薪をくべる部屋(焚口)、その次に2の間・3の間と作品を並べる部屋が続き、最後に煙突へと繋がっていく作りになっています。
各部屋は作品を並べた後、入り口をレンガなどでふさいで封をしますが、自由に開閉できる小さめの穴を開けて置いて、そこから薪を入れたり中の様子をうかがうことができるようになっています。
それぞれの間は壁で区切られていますが、下の方には煙道が通っており、炎はここを通って各部屋を登りながら循環して煙突へと続いていく造りになっています。
登り窯を使うと、薪の灰が作品に付着して自然に釉薬が施されたようになり、独特の風合いを持った作品に仕上がるのだそうです。しかし今では、電気窯やガス窯が普及して伝統的な登り窯はあまり見かけなくなっているとか。今回の見学は貴重なものになりそうです!
◆焼き締め
この登り窯を使って行うのが、今回見学した「焼き締め」の工程です。
今回は、2の間には"綾雛山まつり"用の雛人形などが、3の間には一輪挿しなどが入っているそうです。
窯に火を入れてから少しずつ温度を上げていくので、長時間の作業になります。
まずは焚口に火を起こして薪をくべ、窯を温めていきます。2の間に入った作品から焼きはじめ、そこが終わると次は3の間の焼き締めの作業へと続いていきます。
今回は、いつもより短い作業時間でできたとのことでしたが、それでも前日の午後4時から火を入れはじめ、最後の焼き締めの工程が終わるまで約20時間かかったそうです!その間は火の調整をしないといけないので、徹夜の作業!!
いやいや、大変な作業ですね。
窯の中は、最高で約1300℃まで温度があがるのだそうです。
中は真っ赤でした!レンガの外からでも熱を感じます。
温度計で庫内の温度を測ってはいますが、炎が当たる方向や作品の置いてある位置によっても焼き具合が異なるので、そこはやはり長年の経験を要します。
頃合いを見て、窯の中からテストピースを取り出して、焼き具合をチェックしていきます。
3の間からテストピースを取り出す所を見ることができました。
熱で真っ赤になった焼き物が取り出されます。赤く光を放っていた焼き物は、水をかけられるとジューッ!!っと音を立てて冷えていきます。
こうして炎の当たらない側面の具合までをみていくんですね。
◆灰ころがし
次に、火前で焼いている作品を落として灰を着ける「灰ころがし」を見せていただきました。
窯の中に並んだ焼成中の作品を、薪が燃え尽きて灰になってたまっている、その中にそっと落としていきます。
こうすると、備前焼きにも見られるような、灰の付着による色合いや色のつき具合に仕上がるのだそうです。(灰かぶり)
このとき、気をつけないと作品が壁にぶつかったりして駄目になることもあるそうです。偶然の産物で色や模様がつくので慎重かつ時には大胆な(!?)作業が行われていきます。
土・炎・灰・釉薬・・・などなどこれらの反応によって、様々な風合いの焼き物が出来ていくなんて、不思議ですね〜!
今回は、3〜4時間かけて1つの部屋で焼成を行っていきました。焼き上がった後は、2〜3日かけて、ゆっくりと冷ましてから窯出しを行うそうです。
見学させていただいたのはほんの一部の作業でしたが、普段なかなかお目にかかれない、登り窯での焼成の作業をみながら、陶芸・焼き物の奥深さをほんの少し垣間見ることができたような気がしました。
★☆追加レポート☆★
見学から数日後、焼き上がった雛人形が『綾雛山まつり』で展示されるということで、綾城の「綾国際クラフトの城」へ行ってきました!
あの窯で焼いていた雛人形はどんな風に出来上がったのか!?とっても楽しみです♪
クラフトの城の一角に雛人形のコーナーが設けてありました。
登り窯での作業の後、木を切りにいって作ったという餅花も飾ってあって、ひな祭りの雰囲気満点です。
その餅花の下には、元町窯の雛人形をはじめ、他の窯元[野々陶苑・工房夢とけい・照葉窯]からもたくさんの雛人形が並んでいました。
手のひらサイズの小さくてかわいい雛人形や、大小色々、表情や形も様々な人形があります。
ここでは、3月7日まで展示されているそうです。また、人形たちは販売もされていますのでお気に入りの人形はおうちに飾っていただくこともできますよ♪
この他、ガラスで作られた雛人形や、工芸品で作られた今年の干支も展示されていました!
綾雛山まつりにおでかけの際には、「綾国際クラフトの城」にも立ち寄ってみてはいかがでしょう?
その他の焼き上がった作品は、「元町窯」の他、綾町役場近くの「クラフトはうす&Silver」でご覧頂くことができます。
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■今回取材させて頂いた『元町窯』の情報
○宮崎県東諸県郡綾町大字南俣65
○TEL:0985-77-2066
○詳しくは、mitenの「元町窯」様のページをご覧下さい。
●クラフトはうす&Silver
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