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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.198 私の人生観を変えた出来事Part2
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 現在、入院中にて、病室のベッドでこの原稿を書いています。
 昨年末の右足股関節の人工関節置換術に続いて左足股関節の人工関節置換術を受けました。 
 前回の入院中、人生観が変わったと書きましたが、今回もさらに以前にも増して、人生観が変わりました。
 思い起こせば、股関節に障害があることを知ったのは、2013年にヨーロッパ一人旅から帰って来たときでした。それまで、トライアスロンなどのスポーツをしてきただけに、臼蓋形成不全という生まれつきの股関節の障害があることを還暦を前にして知ったことは、まさに青天の霹靂でした。が、その障害について知らなかったからこそ、スポーツを始め様々なことに挑戦できたし、トレーニングを続けてきたおかげで、還暦を迎えるまで股関節になんの違和感も痛みも感じることなく生活してこれたのでした。
 股関節に障害があることを知ってから10年近く経ちました。この10年間、数えきれないほどの股関節に関する本を読んだり、リハビリのためのトレーニングをしたり、杖をついたりと、私は股関節に関してあらゆることをやってきたような気がします。そして、股関節の不具合によって、行動を制限される事がたくさんあったことは事実ですが、それと引き換えにたくさんの得ることがあったような気がします。また価値観も大きく変わり、人を見る目も違ってきました。
 ずいぶん昔の話ですが、テレビで成人式の番組をやっていました。たくさんの成人をスタジオに迎えてお祝いをする番組でした。その中で、成人式を迎えた足に障害のある女性が、障害を物ともせず一生懸命スポーツに打ち込んでいる姿を取材したものが紹介されました。そして、番組を進行していたアナウンサーがスタジオにいる1人の成人式を迎えた振袖の女性に感想をたずねました。
 その答えを聞いて、私は心が凍りつきました。おそらくその時テレビを見ていた人も同じだったと思います。その女性は心に思ったことを素直に言っただけかもしれません。しかし私はただただショックでした。おそらくその時のショックがあまりにも大きすぎて、ずいぶん時が経った今でもその時、その女性がいった言葉を覚えているのだと思います。  
 その女性の言った言葉。それは「私は五体満足に生まれてよかったです」というものでした。
 その言葉によって、深く傷ついただろうな。その時、まだ若かった私は、彼女の心にそんなふうに思いを馳せました。
 でも、もうすぐ70才になろうかという今なら自信を持っていえます。きっとそんな言葉をいわれたくらいじゃ、彼女はびくともしないだろうなって。心ない言葉を言われたとしても、そのたびに強くなって、そして、そんな自分のことをもっと好きになって、これからもいろいろなことに挑戦していくんだろうなって。そして、そんな自分を誇りに思い、そのたびに幸せを感じるんだろうなって。
 これまでのコラムにもが書いてきましたが、言葉は本当に大きな力を持つのです。そして、その言葉にはそれを発する人の人間性も大きく影響しているのです。同じものを見ても人それぞれに発する言葉が違うのは、性格はもちろん、育った環境、出会った人々、そしてなにより経験値が違うからです。だからその言葉を聞いて、あぁ、この人は人の痛みがわかるのだなぁとか、いろんな経験したんだろうなぁとわかるわけです。自分が人に言われた言葉によって傷つけられたなら、その言葉によって痛みを感じたなら、そんな言葉は人に対して決して発する事はないでしょう。痛みを経験し傷つけられ、また挫折や絶望を経験したからこそ、相手の痛みがわかり、人を思いやることができるのです。何も経験しないより、挫折や困難はたくさん経験した方がより人間として素晴らしくなれるのだと私は思っています。
 さて、話は変わりますが、今回の入院は前回と同じ手術内容であったにもかかわらず、精神的にどこか違っていました。何が違っていたのかなと考えると、前回は足し算であったのに対し、今回は引き算であるような気がするのです。それはどういうことかというと、前回の入院中、私はノートに退院したらやりたいこととして、たくさんの項目を記録しました。退院したらあれもやりたい、これもやりたいと書き連ねました。ところが、今回は、あれを捨てよう、これも捨てよう、と断捨離することばかり考えています。無駄なものが身の回りにたくさんありすぎるのです。これからの人生において必要最低限のものだけ残そう。退院したら、早速それを実行しよう、そう考えています。そして、自分が本当にやりたい事は何なのか?そのことだけに集中してやってみようと思っています。
 やりたいことがあったら、いつかそれをやろう、行きたいところがあったら、いつかそこに行こう、会いたい人がいたら、いつかその人に会いに行こう、そんなことを考えていたら、その「いつか」はいつまでたっても来ません。だから思い立ったらすぐに実行しよう、そう思っています。
 そんなことを考えていると、北海道に我が家ができたことは、私の人生にとって大きな幸せをもたらしてくれました。もし股関節が悪くなかったら、それは実現しなかったと思います。そしてそのきっかけを作ってくれた息子の存在と、いつも私を幸せにしてくれる夫の存在。その2つの存在の大きさにも気づかせてくれました。
 私は幸せ者だなぁ、いつもそう思っています。そう思うたびに神様に口に出して感謝する言葉があります。
「神様、いつもありがとうございます。
 素晴らしい夫と素晴らしい息子がいて、私は本当に幸せです。
 神様が守ってくださる私の体を私は死ぬまで大切にします。
 そして、これからも清く正しく美しく生きていきます。
 それから、文章を書くという天職を生かして、人を幸せにするという天命を任します。
 神様、本当にいつも私を守ってくださって、私を幸せにしてくださってありがとうございます」。
 このコラムが公開される頃には、無事に退院していることでしょう。退院したら、また北海道に行く予定です
2024-08-01 更新
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著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)
『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集)
『HINATA Lady』(2018みやざきの文学「第21回みやざき文学賞」作品集)
『四季通り路地裏古書店』(2019みやざきの文学「第22回みやざき文学賞」作品集)




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「彩木瑠璃の癒しの庭」 http://ameblo.jp/akylulu/
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「巴里アパルトマン生活を夢見て」 http://blog.goo.ne.jp/saikiruri


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