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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.162 心理学という学問との出会い
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 先月のコラムで、私がいかにして「書くこと」を好きになっていったかを述べました。今月は、私のもうひとつ好きなこと、「心理学」という学問との出会いと、それ以降の人生における心理学との関わりについて述べていくことにします。
 大学に入学して、私は心理学という学問に出会いました。そして、心理学の専門書に掲載された、一枚の写真に目を奪われます。それは動物行動学者のコンラット・ローレンツと、その後ろをついてあるく10羽ほどのガチョウのひなの写真でした。
 ローレンツは、アヒルやガチョウの新生ひなが、ある早い時期に、動くものは何でもそれに対してついて行くという「刷り込み」という現象に気づきました。
 私は、ローレンツの存在を知ったとき、まだ彼が存命であるということを知り、いつか、オーストリアに住んでいるローレンツに会いに行きたいという夢を抱きました。そのために、ドイツ語も勉強したのです。

 しかし、私がオーストリアを訪れたのは1990年で、ローレンツはその前年に亡くなってしまっていたのでした。それでも、ウイーン滞在中に、彼が生まれてから晩年まで過ごした、アルテンベルクにある彼の生家を訪れることができました。
 住所はアルテンベルクとだけしかわかりませんでしたが、ウイーンから汽車に乗り、アルテンベルク駅で降りて、出会った人に尋ねただけで、その家の場所がわかりました。ローレンツはノーベル生理学・医学賞の受賞者ですから、彼のことはみんな知っていたのでしょう。また、ドイツ語を勉強していたおかげで無事にたどり着くことができました。ウイーンなどの大都会では英語が通じますが、アルテンベルクではドイツ語しかだめだったからです。
 かつてテレビでローレンツを取り上げた番組がありましたが、そのとき視たとおりの家と彼が上り下りした階段を歩いたときの感動は今でも覚えています。彼の家の書斎には、世界各国から送られてきた本がたくさんあったので、住所を聞いて、帰国後、私も自著の『麦原博士の犬語辞典』を贈りました。なぜなら、ローレンツは麦原博士のモデルの一人だったからです。そのことも、本に添えた手紙に書きました。

 私が大学院での研究テーマとした「早期教育」は、ローレンツの「刷り込み現象」がきっかけだったことはいうまでもありません。早期教育に興味を持ち、さらにもっと勉強したいと、大学院への入学を希望しましたが、父の死で断念。小学校の教師になりました。それ以後のことは先月のコラムの通りです。

 大学院で心理学の勉強をしたい、そんな思いを頭のどこかにずっと持ち続けながらも、結婚6年目にして子どもに恵まれたことで、私の毎日は子育て一色となりましたが、それでも、通信教育で慶応大学の文学部に学士入学し(大学卒業資格があるので、成績表等の審査の結果、3回生に編入し、一般教養の履修を免除されました)、いつ大学院の試験があっても対応できるように心理学の勉強を続けました。

 息子が4歳になり、幼稚園の選択に迫られ、市内の幼稚園を5つほど見て回りましたが、息子はどれも気に入りません。1年保育でもいいか、そう思いかけていたとき、私の大学時代の研究室があった建物が壊されるということを耳にしました。大学自体は移転して新しくなっていましたが、研究室は1階が幼稚園になっていたので、古いまま残っていたのです。それが老朽化に伴い、新しく建て直されることになったのでした。
 大学時代、夏休みになると、子どもたちがたくさん蝉捕りにやってきました。樹齢何十年だかわからない、背の高い木がたくさん生えていたので、セミがたくさんいたのです。研究室の窓からそのようすを眺めていた私は、時折下に降りていって子どもたちと一緒に蝉捕りをしたりしていました。本当に思い出深い大学時代の研究室だったのです。
「そうだ、記念に写真撮りに行こう」
 私は、息子といっしょに取り壊されるという研究室を見に行きました。そして、写真を撮った後で車に戻り、昼寝をしたのでした。
 私が寝ていると、車のドアを息子が叩いて私を起こすのです。
「お母さん、ここ、幼稚園でしょ?」
 息子は興奮してそういいます。
「うん、そうだけど、何?」
「ぼく、ここの幼稚園がいい。気に入った」
「ここはだめよ。なんでここがいいの?」
「だって、大きな木がたくさんあるでしょ。それにターザンロープもあるし……」
「ここはぜったいにだめ。それに入りたいっていっても、試験があるんだよ」
「じゃあ、試験を受ける」
 私は困ってしまいました。なぜなら、この幼稚園だけは入れたくなかったのです。大学時代に研究室の窓から見ていた光景が忘れられないからでした。
「私はこの幼稚園には子どもを絶対に入れない」
 私はそう思ったのをはっきり覚えていました。こんな幼稚園は親として耐えられない、そう思ったのでした。しかし、息子はこの幼稚園以外は行かないといい、試験を受けるのだといって聞きません。夫は息子の好きなようにさせてあげなさい、というので、結果的に試験を受け、一次、二次と試験をパスし、息子は晴れて自分の選んだ幼稚園に行くことになったのでした。

 私の想像していたとおり、地獄の日々となったこの幼稚園での経験は、私の「早期教育」への疑問を膨らませていきます。そして、それと同時に、大学院で心理学を勉強したいという思いをさらに募らせていったのでした。
≪来月のコラムに続く≫

※今月の写真は、ローレンツの写真と、私が読んだローレンツの著書です。
2021-08-02 更新
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著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)
『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集)
『HINATA Lady』(2018みやざきの文学「第21回みやざき文学賞」作品集)
『四季通り路地裏古書店』(2019みやざきの文学「第22回みやざき文学賞」作品集)




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