ミテンの本棚 > 体で感じる・心が育つ | ||||||
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![]() 「なんだかぼくが聖人みたいに見えるじゃないか。ぼくはそんな聖人じゃないよ」。 人生でやるべき仕事を終え、「いつ死んでもいい」といえる夫が羨ましい、コラムにそう書きましたが、私にはもうひとり羨ましい人間がいます。それは息子です。 これまでのコラムに書いてきたように、息子は幼い頃から何でも自分のことは自分で決めてきました。もちろん、幼稚園から大学まで、その選択も全てそうです。 私自身は、息子とまったく逆でした。大学の選択に関しても、地元の国立大学以外の選択肢はありませんでした。小学校の教師になるつもりでしたし、その当時、父が病気で入院していたので、それ以外の選択をするつもりもありませんでした。 人生というのは本当におもしろいなあ、そう思うのは、人生の選択肢を、自分で決めようと、他の誰かが決めようと、必ずその選択肢の先に、ちゃんと自分で決めるべき道が用意されているからです。まるで、神様が私のことをちゃんとわかってくださって、私がやりたいことを実現できるような世界を準備してくださっているようです。両親の言うとおりに大学を選択しましたが、その結果、心理学という学問に出会い、夫に出会い、その後の自分の歩いていくべき道を自分自身で選択することができたからです。 ![]() そんな息子とは、メールで時々やり取りをするのですが、先日、息子に送った写真とメールに、息子はこんな文章を載せていました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ![]() 「伊勢海老を食べに来ました。お父さんは刺身定食」。 こぢんまりと、漁師町の定食屋の席に座っている父の写真が添えてあった。 普通なら家庭内格差を想像するかもしれないけど、この写真には僕たち家族の他愛もない会話が想像できる話が詰まっている。 うちの母は魚介類が大好きだ。 「今日のお昼は天気もいいし、ドライブがてら青島できみの好きな伊勢海老を食べよう」 店に着いてお品書きを見て、 「お父さんは刺身定食にしよう。お母さんは伊勢海老を食べなさい」 「お父さんもせっかくだから伊勢海老を食べたらいいのに」 「きみのを少しくれ。それで充分」 「じゃあ伊勢海老を半分こしようか」 で、結局父は一口もらって満足する。 これが我が家の会話だと想像する。そしてそれがちょうどよく無駄もない。 母はもちろん満足だし、父も喜ぶ母を見ながら顔に出さず小さく喜んでる。 ![]() そういう気持ちの時に、ふと先日、森のガイドさんと森を歩きながら聞いた話を思い出した。 「葉っぱは何故緑が多いか」 小学校で習うように、光は七色で構成されている。赤いものは赤く反射しているから、赤として我々の目に届く。そう考えると、葉の緑は緑を反射している。科学的にエネルギー密度の最も高い緑色を。 〈参考:科学的解釈〉 直達日射の最も強い(エネルギー密度の高い)波長域の吸収を少なくして、過剰な熱吸収を避けるのに適している。 普通なら、太陽光エネルギーを効率よく入れる為に緑こそ吸収すべきと考えることもできる。欲張って全ての光を吸収すると黒になる。が、葉っぱはその選択はしていない。 ![]() 僕らも然り。森に入って癒されるとか、自然の緑に包まれる安心感、部屋に緑(観葉植物)を入れたくなる意味が説明できるかもしれない。 細かい科学の話は抜きにして、この解釈の中で一番強いエネルギーを吸収する選択をせず、跳ね返すことで周りに力を分けてる姿が人間にも通ずる思いやりみたいで。 父と母と、葉っぱの話。 普段気づかないとこにある大きな愛で守られている気がして。 “happiness only real , when shared” ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ そばにいないのに、まるで見ているかのように私たち夫婦の会話を再現している息子。そして、こんな素敵な文章を書いてくれるなんて……。 ※今月の写真は、伊勢海老夫婦の写真を含む家族写真たちです。 |
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2022-03-01 更新 | ||||||
2007
| 12
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著者プロフィール | ||||||
原田 京子(はらだ きょうこ) 1956年宮崎県生まれ 大学院修士課程修了(教育心理学専攻) 【著書】 児童文学 『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店) 『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店) 『アイコはとびたつ』(共著・国土社) 『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート) エッセー 『晴れた日には』(共著・日本文学館) 小説 『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社) 『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社) 『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集) 『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集) 『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集) 『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集) 『HINATA Lady』(2018みやざきの文学「第21回みやざき文学賞」作品集) 『四季通り路地裏古書店』(2019みやざきの文学「第22回みやざき文学賞」作品集) ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() *********************** ※ブログのアドレス(※モバイルでは正しく表示されない場合がございます。 ) 「彩木瑠璃の癒しの庭」 http://ameblo.jp/akylulu/ 「彩木瑠璃の心の筋トレ」 http://blog.livedoor.jp/saikiruri/ 「巴里アパルトマン生活を夢見て」 http://blog.goo.ne.jp/saikiruri ----------------------------------------------------------------------- ![]() 『プラトニック・ラブレター』の単行本が好評で、装いも新たに幻冬舎から電子書籍化されました。 Amazonの電子書籍はこちら(外部サイトへ) 紀伊國屋の電子書籍はこちら(外部サイトへ) |
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