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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.184 これから私がやるべきこと Part6
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 私が筋トレを始めたのは、大学院生としての2年間の生活を終えた40才を過ぎた頃でした。毎日8時間近く研究室に篭ってパソコンの前でデータ処理をしていたため、腰椎椎間板ヘルニアを患ったのです。2週間の入院の後、石膏で型を取ったマイコルセットを身に付けていましたが、担当の整形外科医から「天然のコルセット」である腹筋を鍛えたほうが良いといわれたからでした。早速、ジムでの筋力トレーニングを開始し、トライアスロンへの挑戦を目標としたことは以前のコラムでも書きましたが、その頃はまだ、私が生来の臼蓋形成不全であることはまったく知りませんでした。股関節の痛みもまったくなく、ただただ腰椎のヘルニアを克服したいがためにトレーニングに励み、その結果、体脂肪は15%まで落ち、体重も50kgを切りました。今考えると、あのときに一生懸命トレーニングに励んでいて良かったと思っています。なぜなら、あれほどの過酷なトレーニングは今となっては絶対にできないからです。20年以上の歳月が経過し、私も70歳近くなり、自分が思っている以上に無理ができないことを悟っています。だから、あのとき頑張って身に付けた筋肉の痕跡が「マッスルメモリー」として私の体に残っていることで、私はトレーニングが未経験の人よりもずっと効率的にトレーニングによって筋肉をつけることができるのです。
 将来出くわすかもしれない不測の出来事に、前もって準備をすることは不可能ですが、そのときそのときで自分が必要だと思った行動をして、その出来事にきちんと向き合っていたら、それはいつか必ず役に立つ経験となるのです。私は40才を過ぎて「筋肉貯金」をしてきたおかげで今も筋トレをし、「マッスルゲート」というボディビルの大会への挑戦が可能になりました。つまり、いろいろな経験をすることは、自分の人生においていつかは役立つ「目には見えない貯金」をすることになるのです。経験の数が多いほど、貯金は増えていきます。スティーブ・ジョブズの、スタンフォード大学の卒業式でのスピーチにもあるように、「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎ合わせることはできない。できるのは後からつなぎ合わせることだけだ。だから今やっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない」のです。「こんなことが何の役に立つのだろう」などと考える必要はないのです。
 私はこれまで予測不能な何かが起こったとき、これは神様が良かれと思ってこうしたのだ、そう思うようにしてきました。たとえそれが理不尽なことであっても、今の私にとってそれが必要な出来事である、そう考えるようにしてきたのです。この事態にどう対処すべきか、どうしたら状況を打破できるか、一生懸命考え、そして行動し、それでも無理なときは、時が経過するのを待ちました。父が亡くなって、大学院への進学を断念したときも、腎臓を患って教師を辞めたときも、私にとってそれが最良の選択であるとして受け入れました。結果として、二十年近く経って、私は大学院に進学できたし、もし二十年前に進学していたらやれたであろうことよりもずっと有意義な時間を大学院生として過ごすことができました。なぜなら、私の専攻は教育心理学(児童心理学)でしたから、子育てが一段落した私にとってこの学問を研究するために必要な経験が豊富だったからです。また、教師を辞めることによって、人工透析一歩手前まで悪化していた腎臓も回復し、無理かもしれないといわれていた子どもも授かり、さらには「童話作家」という子どもの頃からの夢も実現できたのです。まさに「たくさんのピンチはたくさんのチャンスをもたらした」といえるのです。
 さて、話は変わりますが、私は今、ある小説を書いています。その小説を書くきっかけとなったのが、20年位前にいただいた、ある編集者からの手紙でした。これまで書いてきた作品の原稿を整理していたら、この手紙が出てきたのです。この編集者の女性には『プラトニック・ラブレター』という作品でお世話になりました。その手紙は、私がその後書いた作品についての講評の手紙でした。手紙の内容については割愛しますが、要約すると、「私の小説の根底にあるものには共通点があり、それは前世の記憶が影響しているのではないか?」ということでした。
「前世」といわれると、かつてブライアン・ワイス博士の「前世療法」を受けたことがありましたが、そのとき、私が夢うつつの中で見たのは、放浪する聖職者の姿でした。私の前世は「聖職者?」などとその時は思ったのですが、あまり深く考えることはありませんでした。ところが今回、「私の前世が作品に影響を与えているのではないか?」そう問いかけられて、私はあらためて自分の前世について考えることになったのでした。そして、好奇心旺盛の私は、「前世療法」を治療の一環として行っている女医の友人に連絡を取り、これまでのいきさつを話して「前世療法」を行ってもらうことにしたのです。
 5時間ほどの長い催眠時間の中で、私は時を遡って自分の前世をたどりました。そして、以前ブライアン・ワイス博士のときに受けた「前世療法」のときと同じような結論を得たのでした。そして、その結果は、私の書く小説作品の根底にあるものが何かを理解させるのに十分なものでした。恋愛に対するストイックな考え方や、私の日ごろの行動の根底にあるもの、それらがすべてこの「前世」からくるものであるのだ、そう理解したとき、私は大いに納得したのでした。
「前世」というものの存在を信じるかどうか、それは個人の考え方によると思いますが、私たちが実際に見ているもの以外にも、この世にはたくさんの見えないものが存在するという事実を考えるとき、悠久の時の流れの中で古の人々が残してきた莫大な統計上の結果(占星術や四柱推命など)が示すように、人は現世に生きながら、過去の影響を受け、さらに現在は未来に影響を与えることを考えると、「前世の存在」は捨て置けない事実だと思えるのです。現在の生き方が未来に影響することは紛れもない事実ですから、私はこれからのことを考えると、今をきちんと生きていかなければと思うのです。
2023-06-01 更新
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著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)
『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集)
『HINATA Lady』(2018みやざきの文学「第21回みやざき文学賞」作品集)
『四季通り路地裏古書店』(2019みやざきの文学「第22回みやざき文学賞」作品集)




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