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宮崎、歴史こぼれ話
科学技術の発展を別にすれば、武士や庶民の生き方考え方などは現代と同じ。民俗的視点から学校の歴史学習では習わない当時の人々の生活を紹介します。
 
No.76 江戸初期用水路を開鑿した松井五郎兵衛
前 田 博 仁 ( 宮崎県民俗学会副会長 )
 宮崎市立赤江中学校の北隣りに小高い丘の稲荷山がある。周囲が平地であるため頂上の公園は眺望が開け、散歩を兼ねて近隣の人たちがよく訪れる。稲荷山公園に続く石段の上り口右手に小さな祠松井神社が鎮座する。松井神社は松井五郎兵衛を祀る。五郎兵衛(1571〜1657)は江戸初期の人物で、寛永(1624〜44)の頃、飫肥藩清武郷に住んでいた。郷内の恒久村、田吉村、北方村、南方村は天水にたよる稲作で毎年水不足で悩まされていた。近くの清武川から水を引けばよいと人々は言うが、途中に丘陵があることに加え清武川と水不足の耕地との高低も分からず水を引く話はそこで終わっていた。

 五郎兵衛は用水路開鑿(かいさく)を失敗したら切腹覚悟で藩庁に願出た。漸く許可が出て五郎兵衛は南の清武川と北側に流れる大淀川(江戸時代は赤江川と言った)のどちらが高い位置になるかを調査した。観察を進めるうちに満潮時清武川は川口から14,5町(凡そ1.5km)、大淀川は2里(凡そ8km)潮が溯上することに気付き、結果清武川が高いことが分かった。清武川と耕地の間の丘陵は石工を雇って掘削、全長4km余の用水路が完成した。寛永17年(1640)五郎兵衛71歳であった。
 これにより220町(220ha)を潤し、新たに開田された水田は445 haとなった。用水路開鑿後、旱害はなく稲は毎年よく実り、農民は松井五郎兵衛に感謝し用水路完成後100年余りたった寛延元年(1748)石碑を建立した。
 宮崎県内用水路の歴史をみると、西都市杉安井堰は元禄2年(1689)、延岡市岩熊井堰は享保19年(1734)に完成している。どちらも江戸中期の設置で松井井堰より約50年、100年も後である。
 江戸の飲料水として多摩川の水を引いた玉川上水は明暦元年(1655)の完成、松井用水は全国的にみても早かったのではないだろうか。
2016-03-22 更新
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著者プロフィール
前田 博仁(まえだ ひろひと)
1942年宮崎市生まれ 宮崎大学学芸学部卒 県内小学校、宮崎県総合博物館、県文化課、県立図書館、宮崎市生目台西小学校校長等歴任、定年退職後きよたけ歴史館館長
現在、宮崎県民俗学会副会長、清武町史執筆員、県伝統工芸審議会委員

【著書】
『鵜戸まいりの道』(私家版)
『歩く感じる江戸時代 飫肥街道』(鉱脈社)
『近世日向の仏師たち』(鉱脈社)
『薩摩かくれ念仏と日向』(鉱脈社)
【共著】
『宮崎県史 民俗編』
『日之影町史 民俗編』
『北浦町史』
『日向市史』
『角川日本地名大辞典 宮崎県』(角川書店)
『郷土歴史大事典 宮崎県の地名』(平凡社)
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