| ミテンの本棚 > 宮崎、歴史こぼれ話 | ||||||
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狸脅し山三ヶヨリ入郷ノ内之、嶮阪ヲ上リ村アリシニ玉蜀黍ヲ蒔シ畑ニ狸ノ屍ヲ全体ノ侭ニ竿頭に釣リ下ケタリ、近日暖気ニテ臭気甚シ、導者云、狸好テ玉蜀黍ノ種子ヲ掘リ食フ、故ニ之ヲ以テ他ノ狸を威ス 山三ヶ(美郷町南郷)は入郷(いりごう)の内なり。険しい坂を上がると集落、そこにはトウモロコシを蒔いた畑があり、その畑には狸の死骸が1匹のまま竿の上部に吊るしてあった。近頃の暖気で狸の臭いがすごかった。案内者が言うには、狸はトウモロコシの種子を掘って好んで喰う。それで狸の死骸を曝し、臭いを周辺に放つことで他の狸を脅す。 鳥獣の作物被害を防ぐため様々な工夫をする。基本的には動物は臭いで、鳥類には光。臭いに敏感な動物には臭いを嗅がせて脅す。例えばボロ布や古着など人間の臭気のする物を吊るす、または頭髪や獣の毛皮などを焼く。他には畑の周囲に巡らした縄に点火して、臭気に敏感な獣の接近を防ぐなどである。椎葉や米良で昔から効果があると言われているものに人の頭髪を焼くというのがある。焼畑の周囲で火を焚いて燻らせ、臭いを周辺に漂わせる。または髪の毛を網袋に入れ竿先に吊るし畑の周囲に何本も立てる。これらは効果があるという。動物は臭いに敏感で、通常嗅がない臭いには非常に警戒するのだそうだ。 北川や北浦(以上延岡市)で行われたものに竹縄を焼くというのがある。竹の表皮に刃物の刃先を直角に当て、強く押し当て手前に引き薄く削る。これは柔らかく撚りを入れることができ、径0.5cm、長さ数メートルの竹縄(地元では火縄という)に仕上げる。これを支柱にくくりつけ、途中にも支柱を立てて渦巻状にさげる。獣害のある山間部の水田や畑の畦などに設置し、夕方点火すると竹縄は朝まで蚊取り線香のように煙をだす。北浦では竹縄の上を簡単な片流れのやねで覆い、雨や露を防いだ。次に髪を焼くのと同様の方法で、ボロギレや煙硝、古タイヤ、油布を燃やして燻らせる。山間部や入り江の多い海岸近くの畑地や水田で行われた。北浦の阿蘇では煙硝やボロギレ、流木を焼いた。海岸に打ち上げられた流木は、火持ちがよくカジメに適していた。 山間部(西都市)で人の髪を網袋やペットボトルに入れ、被害のある周辺の枝にさげるというカジメで、実際に猪や鹿が近づかなかったということが新聞に報道された。宮崎では鳥獣の作物被害を防ぐことをカジメという。 ※入郷とは東臼杵郡の旧東郷町、旧西郷村、旧北郷村、旧南郷村の1町3か村の地域を言った。現在は西郷村、北郷村、南郷村が合併して美郷町に、東郷町は日向市に編入した。 |
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| 2025-06-24 更新 | ||||||
| 著者プロフィール | ||||||
| 前田 博仁(まえだ ひろひと) 昭和40年宮崎大卒。県内小学校、県総合博物館、県文化課、県立図書館を歴任、 平成15年宮崎市立生目台西小学校校長定年退職。 現在、宮崎民俗学会会長 (県)みやざきの神楽魅力発信委員会顧問、(県)伝統工芸品専門委員、 高鍋神楽記録作成調査委員会参与、日南市文化財審議会委員 著書『近世日向の仏師たち』(鉱脈社) 『薩摩かくれ念仏と日向』(鉱脈社) 『近世日向の修験道』(鉱脈社)、 『比木神楽』(鉱脈社)、 『神楽のこころを舞いつぐ』(鉱脈社)、 他に『鵜戸まいりの道』 『飫肥街道』(鉱脈社) 共著 『宮崎県史 民俗編』 『日之影町史(民俗)』 『北浦町史(民俗)』 『日向市史(民俗)』 『清武町史(民俗)』 『みやざきの神楽ガイド』 |
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狸脅し
鳥獣の作物被害を防ぐため様々な工夫をする。基本的には動物は臭いで、鳥類には光。臭いに敏感な動物には臭いを嗅がせて脅す。例えばボロ布や古着など人間の臭気のする物を吊るす、または頭髪や獣の毛皮などを焼く。他には畑の周囲に巡らした縄に点火して、臭気に敏感な獣の接近を防ぐなどである。
北川や北浦(以上延岡市)で行われたものに竹縄を焼くというのがある。竹の表皮に刃物の刃先を直角に当て、強く押し当て手前に引き薄く削る。これは柔らかく撚りを入れることができ、径0.5cm、長さ数メートルの竹縄(地元では火縄という)に仕上げる。これを支柱にくくりつけ、途中にも支柱を立てて渦巻状にさげる。獣害のある山間部の水田や畑の畦などに設置し、夕方点火すると竹縄は朝まで蚊取り線香のように煙をだす。北浦では竹縄の上を簡単な片流れのやねで覆い、雨や露を防いだ。
山間部(西都市)で人の髪を網袋やペットボトルに入れ、被害のある周辺の枝にさげるというカジメで、実際に猪や鹿が近づかなかったということが新聞に報道された。
著書


