ミテンの本棚 > 体で感じる・心が育つ | ||||||
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![]() 最近、久しぶりにステキな映画を観ました。映画のタイトルは「マダム・イン・ニューヨーク」。 ヒロインは、インドに住むお菓子作りが上手な良妻賢母のシャシ。 夫と子どもたちは英語を話せますが、シャシは、母国語のヒンディー語しか話せません。娘はそんな母親を恥ずかしいと思っているし、時には馬鹿にしたりします。夫は、夫で、妻はお菓子作りしか取り柄がないと思っています。 そんなシャシが、姉の娘である姪の結婚式に出席するためにニューヨークに行くことになります。しかも、結婚式の準備のために、夫や子どもたちより4週間も早く、たった一人で行かなければならなくなりました。 姉は、夫を亡くして、女手ひとつで娘たち二人を育て、すっかりアメリカでの生活に溶け込んでいます。そんな姉の姿を見ながら、素晴らしいと思うにつけ、自分が惨めになります。そして、追い討ちをかけるように、英語を話せないことで外出先では惨めな事態に。 そして、ついに、シャシは決心するのです。4週間のアメリカ滞在中に、少しでも英語をマスターしようと。それからのシャシは、少しずつ、そして見違えるように成長していきます。 おっと、お話のあらすじはこれくらいに。続きは映画を観てくださいね。 ![]() 私は、この映画の舞台であるニューヨークのマンハッタンで1年近く生活をしました。そして、私もシャシのように、英会話のクラスに通いました。 私の場合は、コロンビア大学の外国人のための英会話のクラスでした。毎週月曜日から金曜日までの週5日、1日2時間。まず始めに、クラス分けのためのテストがあります。内容は、文法とディクテーション。100点満点で、点数順に初級から上級まで5クラスに振り分けられます。私は98点で、上から2番目の成績でしたから、上級クラスに配属されました。成績が一番良かったのは、俳優志望のインド人の若い男性でした。 教えてくださるのは、英語を母国語としない人たちに英語を教えるための教育法を学んでいる大学院生たちで、いわばこの英会話のクラスは、彼らの教育実習の場のようなものでした。 クラスメイトはぜんぶで20人ほど。ほとんどがヨーロッパ人で、日常的に英語で会話できる人ばかりでした。ですから、授業はほとんどがディスカッション。私は英会話が苦手でしたから、いつも、貝のように口を閉じたまま。ただ、文法の授業の時だけは、中学校から大学まで10年間英語を勉強していますから、授業に参加することができました。 ![]() そのうちのひとりが私にこういったのです。 「あなたは、どうして、いつも自分の意見を言わないのか? 何を考えているのかわからない。」 どうやら、彼らは、私が、英語を話せるくせに、自分の意見は言わないでだまっている、得体の知れない人? だと思っているようでした。彼らにしてみたら、そう思うのは当然なのかもしれません。テストの成績もよく、文法の時間にはちゃんと発表するのに、ディスカッションになると黙り込むのですから、まさか、私が英会話が得意でない、などとは思わなかったのでしょう。 私は、拙い英語で、一生懸命説明しました。 「私は、英語を上手く話せません。文法は勉強しましたが、話す経験がほとんど無かったので、意見を言いたくても上手くいえないのです。」 すると、思わぬことが起こりました。険しい顔をして私を取り囲んでいたクラスメイトたちの表情が、途端に優しい顔に変わったのです。そして、みんなが口々にいいました。 「英語を上手く話せなくっても大丈夫だよ。」「私たちは馬鹿にしたりしないよ。」 ![]() 私は、この英会話のクラスでの経験から多くのことを学びました。一番の収穫は、「一歩前へ進み出て、自分の意見をいうことの大切さを知った」ことでした。ことに、マンハッタンのように「人種のるつぼ」といわれ、たくさんの外国人が暮らす街では、そのことはとても重要なことなのでした。そして、それからの、マンハッタンでの暮らしが、より充実したものになったことはいうまでもありません。 ![]() 「何事も初めては一度だけ。その一度は特別な体験です。だから、楽しんで。迷わずに自信を持って。決然と。」その言葉にシャシは勇気をもらいます。 そして、映画の最後に、シャシはこういえるまでに成長するのです。 「自分を助ける最良の人は自分。自分を愛することを知れば、古い生活も新鮮に見えてくる。ステキに見えてくる。」 もし、シャシが、英語を話せないことで自分を惨めに思い、殻に閉じこもっていたままだったら、映画の最後に、あんなに素敵な笑顔を見せることは永遠にできなかったでしょう。 先月のコラムで、「誰かに無条件に愛される」ことの大切さを書きましたが、自分で自分を愛することは、自分次第でいくらでもできるのです。どんなに人が愛してくれなくても、自分だけでも自分のことを愛しさえすれば、きっと、自分を成長させるために行動を起こさせるでしょう。そして、成長しようと努力する人は、間違いなく魅力的な人なので、だれからも愛されるでしょう。シャシがいうように、「自分を助ける最良の人は自分」なのです。 ※今月の写真たちは、私が街で見かけた美しいものたちをカメラに収めたものです。 |
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2015-08-03 更新 | ||||||
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著者プロフィール | ||||||
原田 京子(はらだ きょうこ) 1956年宮崎県生まれ 大学院修士課程修了(教育心理学専攻) 【著書】 児童文学 『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店) 『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店) 『アイコはとびたつ』(共著・国土社) 『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート) エッセー 『晴れた日には』(共著・日本文学館) 小説 『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社) 『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社) 『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集) *********************** ※ブログのアドレス(※モバイルでは正しく表示されない場合がございます。 ) 「彩木瑠璃の癒しの庭」 http://ameblo.jp/akylulu/ 「彩木瑠璃の心の筋トレ」 http://blog.livedoor.jp/saikiruri/ 「巴里アパルトマン生活を夢見て」 http://blog.goo.ne.jp/saikiruri |
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