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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.57 壁・死・コンプレックス
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 このところ、たて続けに美しいものを見ることができて、まだその興奮から覚めやらないでいます。そして、そのおかげで、あらためて理解できたことがあります。それは、美しいものとは、たくさんの時間をかけたものである、ということです。
「清川あさみ」展が、宮崎市で開催されました。私は三度会場に足を運びました。そして、そのたびに新しい発見がありました。ただ漠然とながめているだけでも美しい作品ですが、ひとたびその作品の細部に目を凝らすと、さらにその美しさに度肝を抜かれることとなります。それは、ひと針ひと針の縫い目の美しさであり、微妙に変化している糸の色の美しさです。何千回、何万回、何百万回、いや、それ以上に繰り返されたであろう彼女の手の動き。そしてそれは、想像を超えた時間を重ねてできたものです。他者からみると、気が遠くなるようなこれらの作業ですが、おそらく作者である彼女にとっては、楽しくて楽しくて仕方がない作業なのかもしれません。そこにあるものは、この作品によって、生活の糧を得たいというよりは、自分が心の中に持っている思いを、自分のできうる限りの手段で最高の形に仕上げたい、それに尽きるのだと思います。「天職」とはそういうものなのでしょう。

 フェルメール展が九州国立博物館で開催されています。私も、見に行ってきました。「光の魔術師」といわれている画家、フェルメールは、その淡い光の具合を表現するために、何種類もの絵の具を、何回も何回も重ねています。太陽の光が反射している立体を、三次元の世界から二次元の世界へと移行させるために、どれほどの工夫を重ねたことでしょう。その微妙な筆のタッチで、直径一センチにも満たない真珠の玉が、太陽の光を浴びて淡い光を放って見えるのですから。

 これら美しいものを作り出すことにおいて共通していることは、それを作り出す人が、「美」というものに対して、妥協を許さないということです。「好きなこと」だからこそ、無条件に自分の魂を込めることができ、時間を重ねることができるのです。これらの一連の行為と想いが、美しい最高の作品を作り出すのです。そう考えたとき、私は、自分が作品に込める想いがいかほどのものであるかをあらためて反省しました。
 このコラムを書き始めて、もう5年以上の月日が経過しました。バックナンバーも60ほどになりました。毎月1日に公開しているこれらの文章は、400字詰めの原稿用紙で8枚ほどですから、すでに、すべての原稿をあわせると、500枚近い原稿が、たくさんの人の目に触れていることになります。一度に500枚の原稿を書くとなると気が遠くなるような気がしますが、5年という月日がそれを可能にしてくれたのです。毎月毎月、私なりの思いを込めて、そして愛を込めて、ひと文字ひと文字、時間をかけて書いています。素晴らしい内容になるようにと、私なりに妥協を許さないように。

 しかし、私のそんな思いも、「大英博物館 古代エジプト展」を見たときには、それがいかに私の慢心に過ぎないかを思い知ったのでした。日本初公開となった世界最長の37メートルの『死者の書』を前にして、私はそれを書き綴っていった人々の莫大なる文字の量に圧倒されたのです。
『死者の書』とは、死者の肉体がミイラにされ、様々な儀式を経て、「オシリス神」の館にたどりつき、審判を受ける。そして、生前の行いについて天秤にかけられて審判が下る。天秤がつりあったら、「イアルの野」という楽園にたどりつける、そんな全過程を文字や絵で表したものです。死者を無事にこの楽園にたどり着かせるために、様々な呪文や捧げ物などが供えられ、死者は、埋葬されます。これらの一連の過程が、実に事細かに、37メートルにわたってパピルスに書き込まれているのです。

 興味深かったのは、「罪の否定告白」という場面です。死者は、オシリス神の審判を受ける際に、42柱の神々の前で、生きていた頃の正しい行いを証明するために、「私は○○しませんでした。」と、ひとことも間違えずに告白しなければなりません。その、42の告白の内容は、「盗みをしなかったこと」「罪を犯さなかったこと」など本当に極当たり前のことであり、その罪は、人としてやってはならないことのように思えました。が、しかし、中には、私たちも、ひとつくらいの罪は犯しているかもしれない、というものもありました。「赤ちゃんの口からミルクを奪わなかったこと」「理由もなくおこらなかったこと」「誰も怖がらせなかったこと」「誰も泣かせなかったこと」など、それらの罪は、もしかしたら、日ごろの子育てにおいて、みなさんも、なにかしら、思い当たることがあるかもしれません。

 古代エジプトにおいて、書くことを職業とする人々が存在し、文字を書けない人々もちゃんと「イアルの野」という楽園にたどりつけるように、死者が死んだ後も幸せになれるようにとの願いを込めて、これらの長い長い文章を手書きをしていった人々の仕事を思うと、気が遠くなりそうでした。そして、死んでからもなお、自分の愛する人が、幸せに暮らせるようにとの、死者を見送る人々の愛情がひしひしと感じられました。

 清川あさみさんはコンプレックスを作品に変え、フェルメールは、貧乏で子沢山の生活の日常から、光をとらえて表現する方法を見い出し、古代エジプト人たちは、死を迎えるにあたり、いかにその恐怖から逃れ、死後の世界でも幸せになれるようにと、これほどの膨大な「書」をしたためる。すべては、マイナスに思える「コンプレックス」や「死」や「壁」が、あるからこそ、それを克服するために、人は、後世に残るような作品を生み出すのだ、そう思います。
もしこれらの「心のとっかかり」となるものが存在しなかったら、人は、何気なく過ぎていく日常に、ただただ流されていたかもしれません。立ちはだかる壁があったからこそ、それを乗り越えるべく力を、神様が与えてくださるのでしょう。

「優れた者ほど間違いは多い。それだけ新しいことを試みるからである。」というピーター・ドラッカーの言葉があります。何の苦もなく前に進めるということは、自分の現在持っている力の範囲内で処理できているということですから、それで現状維持はできても、成長はありません。そう考えると、子どもたちの日々の行動は、常に、試行錯誤の連続であり、だからこそ、子どもたちは、毎日、驚くほどの成長をするのだと思います。年を重ねるにつれて、つまりは大人になるにつれて、ある意味で賢くなって、できるだけ壁にぶつかることなく、無事に過ごそうとするようになると思います。でも、私は、いくつになっても、子どものように純粋な心を持ち続け、つねに成長できるように、機会あるごとにぶつかるべき壁を見つけ、新しいことに挑戦したいと思っています。


※写真6枚は、「大宰府天満宮から九州国立博物館に向かう途中の動く歩道のイルミネーション」
2012-11-01 更新
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著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)

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