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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.25 たった一つしかない命には限りがあること
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 いつも、そのときにできるベストを尽くすこと。それは、私が心がけていることです。だから、そのベストを積み重ねてきた、「今、このとき」が、私は一番好きです。神様に、「あなたが一番戻りたい過去の『とき』に戻してあげる」といわれたとしても、私は、今を生きることを選ぶでしょう。ただ、たったひとつだけ、私が後悔してもしきれないことがあるのです。以前、『言葉の魔力』というタイトルのコラムに登場した、ミス・パーカーのことです(ミス・パーカーについては、バックナンバー15を再読してください。※ページ最上部より>>バックナンバーをクリック)。ミス・パーカーは、マンハッタンで出会った、私の生き方を180度変えるきっかけを作ってくれた、私の人生においてとても大切な人です。私が日本に帰ってからも、息子の写真を送ったりして、手紙のやり取りをしていました。

 そうして何年か経ったとき、私の送った手紙への返事が途絶えました。私が知り合ったとき、すでに72才。私とは40才以上の年の差があるので、もう80才近いはずです。私は、まさか・・・、と思いました。ひと月たってもふた月たっても、返事は来ません。私の心に大きな不安が広がりました。「必ず、もう一度、あなたに会いにマンハッタンに来ます」。そんな約束をしていたのに・・・。私は思い切って何度か電話をしてみましたが、通じませんでした。
 半年くらい経った頃、私の元に、懐かしい、けれど、少したどたどしい文字で、エアメールが届きました。封を開けると、表書きよりさらにたどたどしい文字が、便箋に並んでいました。あまりにたどたどしくて、私は、一度パソコンにその文字列を解読したものを書き込みながら、内容を読み取りました。手紙には、転んで腕を骨折し、病院に入院していたこと、退院したあとは、今まで住んでいたアパートを出て、退職後の老人たちが共同で住んでいる住まいに引っ越したこと、早く返事を書きたかったけれど、腕が思うように動かなかったこと、やっと書けるようになったけれど、前のようにうまくかけなくてごめんなさい、というようなことでした。私は、字面を追いながら、涙が流れて仕方がありませんでした。

 ピンと背筋を伸ばし、私より30センチ近く背が低い、そんな小さな体にもかかわらず、ポジティブでパワフル、いつも笑顔を絶やさない、本当に素敵な女性でした。ミス・パーカーは、その思うようにならない手を、持ち前の前向きさで、必死に動かして返事を書いたのでしょう。
 思えばそのとき、私はミス・パーカーに会いに行くべきだったのです。私は、返事が来たことにすっかり安心してしまったのでした。それから、しばらくして出した私の手紙に、ミス・パーカーからの返事は、来ませんでした。永遠に・・・。
「自分に自信を持ち、前向きに生きること。命ある限り、何かに挑戦し続けること。」
 ニューヨーク市立図書館の司書として働き、退職後も、ニューヨーク市立大学でロシア文学を勉強していたミス・パーカー。いつも笑顔を絶やさず、相手を思いやり、優しさを忘れない、私の中で世界最高の女性でした。ミス・パーカーのような女性に「死」が訪れることなど、考えたこともなかったのでした。

 今、私の家の台所に、一輪の薔薇の茎があります。毎年、私の誕生日になると、薔薇の花が贈られてきます。昨年も、美しいピンクの薔薇が贈られてきました。11月の終わりから、45日間、薔薇の花は咲き続け、さらに、茎と葉の間から、新しい芽が顔を出しました。花が枯れかけた頃、花を茎から切り離して、新たに茎を水に活けました。茎の部分からは、次から次へと萌黄色の可愛らしい葉が生え、米粒ほどの蕾が顔を出したのでした。なんと、ピンクの薔薇は、自分の命と引き換えに、可愛らしい子どもを残したのでした。
「こうして、永遠に命というものは引き継がれるのだなあ」そんな風に感動していた私の心とは裏腹に、か細い葉っぱが枯れ始め、蕾の上のほうが茶色く変色し始めました。これまでこうして咲き続けてくれただけですごいことなのだ、そう自分自身を納得させながらも、まだ、一部に萌黄色の葉が息づいているその茎を、毎日祈るように見ていたのでした。

 子どもたちは、こうして、親に見守られながら命をつないでいくのです。でも、私は、ピンクの薔薇が残した子どもの命をつなぐことができないでしょう。こうして、「風前の灯」状態の命を生きる蕾を見つめながら、私は、いつかくる日を迎える覚悟をしていました。そうして、これまで、考えないようにと心の片隅においやっていたミス・パーカーへの後悔の念を、改めて引っ張り出してみることになったのでした。
 たった一つしかない命。その命には限りがあること。私たちはそのことをふと忘れそうになります。その命をつなぐために、どれだけたくさんの人たちがその命に携わっているか、そのことを本当に心から理解することができる子どもは、きっと、命を粗末にすることはないでしょう。そして、自分の命を大切に思うことができるなら、きっと、人の命をも大切に思うことができるでしょう。そうすれば、自分の命と同じように、人の命も愛おしく思えるようになるでしょう。

「あなたは、お母さんの命よりも大切な宝物よ」息子が幼い頃、私はハグをしながらいつもそういっていました。もし私が死んでしまったら、きっとこの子は悲しみのあまり、生きてはおれないだろう。私は本気でそう考えていました。大きくなるにつれて、その考えは薄れてはきましたが、それでも、まだまだこの子を残して死ねないなあ、と思っていたのでした。
 その息子も、ようやく社会人になります。本当の意味の親からの完全なる巣立ちです。息子の巣立ちは、私の背中に大きな翼を与えてくれました。もう、私が死んだとしても、息子はたくましく生きていくでしょう。母親としての役目を終えた今、私は、心おきなく飛び立つことが出来ます。まず、今、私がやりたいこと、それは、私が生きているうちに、たった一つの後悔をはやく私の心から消し去ってしまいたいということです。

「必ず、もう一度、あなたに会いにマンハッタンに来ます」。その約束を果たしたいのです。だから、近いうちに、ミス・パーカーに会いにマンハッタンに行くつもりです。報告したいことが山ほどあります。きっと、私の手には届かないところから、静かにうなずきながら聞いてくれることでしょう。そして、また、私の心を照らし続けてくれているあの言葉を、繰り返し贈ってくれるかもしれません。
「I am proud of you. あなたを誇りに思います。」

※薔薇の花は、ついにその終わりを迎えました。花が届けられてから81日目のことでした。蕾を切断すると、開花する日を待ちわびた、その薄萌黄色の花びら予備軍たちが、いくつもの層を重ねていました。
2010-03-01 更新
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